悲しい知らせ カーラジオから流れた『鉄腕アトム』

土木作業員のアルバイトが終わり、秋田から出稼ぎに来ていたおじさんが運転する軽トラの助手席に座ってカーラジオをつけると、「空をこえて〜ラ・ラ・ラ 星のかなた〜」と『鉄腕アトム』の主題歌が流れていた。

1989年2月9日。

当時大学生だった私は冬休みはずっと地元の土建業者で土木作業員のアルバイトをしていたんですが、その帰りに敬愛する手塚治虫さんの訃報を聞いたのでした。

「ガぁ〜ン」という「ブルー」な気持ちになり、当時『朝日ジャーナル』に連載されていた『ネオ・ファウスト』も『ビックコミック』に連載されていた『グリンゴ』ももう読めないのかと思ったりしてしまったのを思い出します。享年62歳。惜しまれる、そして早すぎる死でした。

それからもう21年も経ってしまいました。

小学生の時は手塚作品と言えば、アニメ。『ジャングル大帝』、『リボンの騎士』、『ふしぎなメルモ』、『海のトリトン』、『ミクロイドS』、『鉄腕アトム』(カラーの方)、『悟空の大冒険』、『三つ目がとおる 』や『どろろ』などを再放送のたびに観ていた記憶があります。24時間テレビの時にやっていた『100万年地球の旅 バンダーブック』、『海底超特急マリン・エクスプレス』、『フウムーン』、 『ブレーメン4-地獄の中の天使たち-』、『タイムスリップ10000年プライムローズ』、『大自然の魔獣 バギ』、 『銀河探査2100年 ボーダープラネット』、『手塚治虫物語 ぼくは孫悟空』などの作品もだいたい観ていました。

中学生の後半から高校生の時は『ブラックジャック』、『火の鳥』、『ブッタ』、『アドルフに告ぐ』などの漫画の方にはまり、とくに、『アドルフに告ぐ』には衝撃を受け、大学の歴史学科に進むキッカケの一つにもなりました。浪人から大学生の時には手塚作品の青年漫画と言われるものはほとんど読みつくしたと思います。『きりひと讃歌』、『一輝まんだら』、『MW(ムウ)』、『陽だまりの樹 』、『ばるぼら』、『奇子(あやこ)』、『シュマリ』、『I.L(アイエル)』、『地球を呑む』などや、『時計仕掛けのりんご』、『空気の底』、『ゴッドファーザーの息子』、『人間昆虫記』や『ザ・クレーター』 などの短編集などなど。

ヒューマニズム、夢、希望、友情、性、同性愛 、愛そして命。公害(環境問題)、強欲、拝金主義、悪、シニカル、戦争、煩悩、エロティシズム、孤独。

喜怒哀楽、人間の負の部分を含めて、いろいろなことを教わったような気がします。


一本のペンから夢をくれた人がいなくなっちまった
ブラックジャックはいなかったのかい?
火の鳥も?
でも未来の大人たちの心の中に
生きている 生きている

合掌。