決算審査と反対討論 (2009年度決算の状況 その3)


市議会での決算の審査は、その年度の予算(補正予算も含む)の歳出内容や執行状況やその効果などを検証・総括し、翌年度以降の予算編成に活かすという役割があります。
(つまり、2009年の決算審査は2011年度の予算編成に活かしていくという性格があります。)

そう言った意味では、国がおこなっている「事業仕分け」的性格もあるのですが、残念ながら、ここ数年の立川市議会での決算審査は質問時間の制限や『決算報告書』の簡素化などで、その力が十分に発揮できなくなっているような気がしてなりません。

特に行政に耳の痛いことをはっきり言う野党側の審査が不十分になってしまっています。効果的な資料請求をして議論などに臨んでいますが、やはり限界があります。行政にとっては厳しい追究などを逃れやすくしますし、議会にとっても「質問力」の低下につながりかねない事態ですが、民主・公明・自民の大与党体制の立川市議会の中で、「大政翼賛会的」な議会にならないように努めていきたいと思っています。

以下が、2009年度立川市一般会計歳入歳出決算の反対討論です。


2009年度立川市一般会計歳入歳出決算の認定への反対討論


 私は、議案第65号 2009年度立川市一般会計歳入歳出決算の認定に反対の立場で討論をいたします。


 格差社会の拡大、貧困層の増大という全国的な社会情勢の中で、2008年秋のリーマンショックから始まった世界的な恐慌は、日本においても実体経済に影響に及ぼし、自動車産業など輸出業種の企業では、派遣切りに象徴される非正規労働者の首切りで多くの失業者をつくり出しました。2009年に入っても、景気低迷が続き、雇用情勢も悪化をし続けてきました。


 2010年度版の労働厚生白書によれば、2009年度平均の完全失業率は、5.2%となり、2002年度の5.4%に次ぎ過去2 番目の高さとなりました。また、2009 年度平均の有効求人倍率は、0.45 倍と1963年の統計開始以来最低を記録しています。完全失業者数も343 万人と前年度差68 万人の増加、有効求人数は126万人と前年度比26.1%の減少、有効求職者数は281 万人と前年度比26.8%の増加と、いずれも前年度の雇用失業情勢よりも悪化する形となっています。


 さらに、不況型倒産は構成比で過去最大となり、自殺者数は12年連続で3万人を超え、そのうちの経済苦による自殺は4分の1をしめるということです。


 2009年の民間給与は平均で405万9000円で、前年比23万7000円の減、5.5%の減で下落額、下落率とも過去最大であるとも報道されています。


 生活保護リーマンショックによる景気の低迷で2008年12月以降はほぼ毎月、前月より1万人以上増える傾向が続いて現在は190万人を超えているようです。


 立川市でも、法人市民税が22.7%13億3000万円の減、個人市民税も2.2%の減2億8000万円の減と厳しい状況でしたが、生活保護世帯も前2008年度の2850世帯から3117世帯とさらに増えて、東京26市の中で依然として1番多いという状況が続き、立川市民の生活もさらに苦しくなっていることが伺えます。


 このような市民を取り巻く情勢の中で、立川市の任務は拡大する格差を是正し、貧困化に歯止めをかけて市民が人間らしく働き、暮らし、生きるための施策を進めることであり、可能な限りのセーフティ・ネットを張ることであり、特に2009年度においては、生活支援と雇用・労働・就労支援の強化が必要であったと思います。


 その点においては、国民健康保険料の値上げを見送り、国の補助事業とはいえ、介護保険料の引き下げをおこない、地域経済活性化推進員による就職・仕事関連の無料相談事業や障がい者の市役所内での実習・訓練による就労支援などは大きく評価できるものでした。


 また、談合事件以降の2004年度から2009年度までの6年連続しての行財政改革の取り組みで、一番の削減効果となった入札改革は「落札率の低下等による影響額」として2009年度は約10億5300万円も節約額があり、ここ6年間でも約36億円もの節約を生みだしています。この入札改革も大きく評価できるものです。


 さらに、市長・副市長・教育長などの特別職の給与削減、職員給与等の削減、繰り上げ償還や借り換えによる利子軽減による借金の削減、コンビニ収納、施設管理業務点検調査、ごみ減量の取り組みや非焼却方式のごみ処理への検討、普通学級臨時介助員事業の委託化と充実、学校図書館システムの導入や図書の整備、学校図書館支援員事業など、苦しい財政の中でのやりくりで多々評価できる面もありました。


 しかし、私たちが兼ねてから拙速で安易な民営化であると反対してきた市立西砂保育園の民営化を強引に進め、保護者の理解が不十分なまま分園用地を購入したり、地区図書館2館の試行的な指定管理者制度の導入も大きな反対運動や図書館協議会からの導入への慎重を求める声を押し切って進めたということを認めるわけにはいきません。


 また、77歳の高齢者への敬老金の廃止はその財源を認知症予防対策に振り替えるということであったとしも性急すぎたと思います。特に26市の多くの市が77歳の高齢者への敬老金をのこしており、後におこった「消えた老人問題」などを見ると、77歳の敬老金については存続し、安否確認などの見守りなどの手段とすべきであったと考えます。


 さらに、新庁舎建設の財源について、国からの補助金が減額になったことについては、見通しの甘さを指摘せざるを得ませんし、そのことを市民に伝えるという面からも不十分であったと思います。住民参加型市場公募債についても、上限である300万円という大口の応募が多く、結局資産のある人の利殖に税金を出すということにつながっていると思われます。縁故債で普通の金融機関で借りた方が手数料が安く、市職員の仕事を大幅に減らせることから見ても今後の公募債の発行はすべきでないと思います。

 
 さらにまた、立川駅南口のデッキの整備や道路無電柱化事業は、不急の事業であり、厳しい財政状況の中においては凍結すべきであったと考えます。


 加えて、費用対効果が薄く、個人情報保護の点で議論が分かれる住基ネットワークシステムへの支出や、安全確認が不十分なエコセメント化事業への支出も同意できません。また、公平委員会や選挙管理委員会などの行政委員などの日常の勤務実態のない非常勤特別職の報酬を、再三の指摘にもかかわらず、日額制に改めず、月額制のまま放置したことは市長のいう「聖域を設けず行革をおこなうという」ことに例外があるということを示しているのではないでしょうか。


 最後に、緊急雇用対策ということで国の補助事業である雇用対策はありましたが、立川市の単独事業としての生活困窮者に対する施策や雇用・労働・就労対策は率直に言って、まだまだ不十分であった思います。苦しい財政事情があるにしても、リーマンショック以降の雇用情勢の悪化状況を考慮すれば、もう少し工夫できたと考えます。


 特に清水市長就任以来、職員削減目標が最優先され、金科玉条のごとく経営改革プランを強引に推し進めようとしてきました。2009年度は経営改革プランの最終年度ということもあって、その強引な姿勢が目立っており、今年度からは経営戦略プランを立てて同様な姿勢を貫こうとされていますが、福祉関係の事業を民営化しようというときはコスト論ありきではなく、方針を作る前に当事者や現場などに広範に意見を聞いて、もっと慎重に時間をかけて調査研究、分析を重ねるべきと考えます。民営化などに関連する市民説明会などを数多く開いても、最終的には「何々ですから、ご理解ください」と言って、結局は市民の意見を退けるという行為は、ともすると、そういう説明会が市民の意見を聴いたというアリバイ的なことにもなりかねません。
 市長は施政方針で、
   市民との対話に当たっては十分な情報の公開や説明責任を果たし、市民の意見に謙虚に耳を傾ける。
−−と言っておられましたが、その基本にこそ立ち返るべきです。


 以上の理由により、総合的に見て、この2009年度一般会計決算の認定には反対いたしますが、市民の生活を守り、希望を持って生活できる立川をつくるために、市民の意見はもちろん、私のような野党の議員の意見にも耳を傾けていただき、来年度の予算編成に当たっては高齢者、障がい者、子どもに優しい、温かみのある施策をとること、実効性ある市独自の雇用就労対策をとること、でき得る限りのセーフティ・ネットを張り、格差を是正し、公平な社会を目指していただけるように要望するとともに、政治生命をかけるというごみ問題解決のために、最大限の御努力をお願いして、反対の討論を終わります。


2010年9月議会 各議員の「議案に対する賛否」は以下の『議会だより』の8ページ目にあります(PDFファイル)。五十嵐の賛否は16番目に記載されています。

http://www.city.tachikawa.lg.jp/cms-sypher/open_imgs/info/0000000187_0000019051.pdf