心外です!! 週刊ポストの「無断引用」

先日、市民の党の先輩議員の野見山修吉・小金井市議から、「週刊ポストの記事に名前が出てるよ」という電話をもらった。いわゆる「公務員バッシング」の記事に、私の保育園の保育士給与に関する資料がどうやら使われているらしいのだ。

週刊ポスト側から、取材などは一切受けておらず、「寝耳に水」状態だったので、何かの「間違い」じゃないのと思って、コンビニで、週刊ポストの新年合併号(2010年1月1日・8日号)を買ってみると、以下のように書かれていた。

東京都立川市議・五十嵐健氏の07年の調査によると、同市内公立保育園の正規保育士の平均給与は42万1000円、私立保育園の正規保育士の平均給与は25万5000円で、16万6000円もの格差がある。もちろん「公立のほうが手のかかる子が集まる」なんてことはない。


確かに「嘘」は書いていない。が、このような使われ方ははっきり言って心外だ。しかも何の連絡もなく無断に引用するのはルール違反ではないだろうか。

多分、この「無断引用」は、私のホームページの「ちょっと待った !! 子どもたちの立場から じっくり考え直そう保育園の民営化」というページの「正規保育士の官民(公私)格差と比較 」という資料からであると思われるが、私がこの資料をつくった真意は、単純な「公務員バッシング」のためではさらさらない。

この「正規保育士の官民(公私)格差と比較 」という資料は、逆に「私立保育士の給与が安すぎるのではないか」、「この週刊ポストような官民格差論(給与だけの単純比較論)が間違いではないか」という問題意識をもって、立川市の保育課に資料請求をした資料をもとに私がつくったもの。

2007年4月当時で、平均給与で16万6000円の格差があるの事実であるが、そもそも、正規保育士の平均年齢や勤続年齢にも格差があり、立川市の正規保育士の平均年齢は公立で40歳、私立で32歳と私立は8歳も若く、勤続年数は公立で19年、私立で10年と9年もの差があるのだ。

つまり、この官民のコスト格差が、なぜ生じているかと言えば、ひとえに保育士の年齢と勤続年数の差があるからなのである。私立保育園の場合、極めて定着率が低く、非常に離職率が高いという結果、平均年齢、勤続年数が低くなり、給与水準も当然低くなるという構図である。

加えて、正規保育士の年齢構成も、公立は20代、30代、40代、50代が満遍なく分布している一方で(団塊の世代が多いために若干50代が多い傾向にある)、私立は、20代が圧倒的に多く47.1%、30代が29.4%で20代・30代の構成比率が約7割7分を占めるという極端な年代構成となっている。

世間の中でも8歳という年齢と9年というキャリアの差があればそれなりに給与に違いは出るし、人の命を預かり育むという保育士という仕事の専門性を考えると、給与の査定とキャリアは大きく関連するのではないだろうか。

保育士は0歳児から5歳児までの子どもを保育するのだが、0歳から5歳児まをそれぞれ2年間担当して、やっと「一人前」とよく言われるそうだ。つまり12年間で専門性を備えた一人前の保育士になれるということなのだが(これに保育士自身の子育て2年を加えて14年という人もいるそう…)、立川市の私立保育園では多くの保育士がその12年を前にしてやめてしまっている状況がある。

いわば、それだけ「しんどい仕事」であるとの証左であるのだが、これには、認可の私立保育園保育士への国の給与補助(民間施設給与等改善補助)が10年で頭打ちになってしまい、それ以降は補助が増えないようになっているという構造上の問題もある。つまり、私立の保育士は勤続10年以降は昇給は難しくなるのだ。

自公前政権下で安上がり保育を目的とする保育の市場化とそれに伴う規制緩和が進められたが、保育士の低賃金と過密労働化による保育の効率化は、当然「保育の質」の低下を招く。また、少し前に、保育施設での死亡事故を分析したところ、認可保育園での事故は「待機児童ゼロ作戦」で保育所規制緩和が加速した2001年を境に増えていたというように報道されている。そういう危険性もはらんでいるのだ。

名無しの権兵衛の週刊ポストの記者サン、公務員バッシングという「レールに敷かれた記事」を書かなければならないという事情もあるのかもしれないが、それならば、保育市場化論者の資料を使ってくれと言いたい。あとホントに「記者魂」があるなら、しっかりとした「調査報道」をしたらいかがか…。この記事の前のページの「月2回の出勤で月給50万円」も!という選挙管理委員会関連記事は賛同できる。ちなみに、立川市議会で、私も同趣旨で質問(※1)をしている。

「無断引用」した資料を、ネットでみたように、このブログをみたならば、なぜ無断に引用したのか教えていただきたい。

 連絡を待っています。

【関連リンク】

◆立川市議会議員 五十嵐けんのホームページ

◆「ちょっと待った !! 子どもたちの立場から じっくり考え直そう保育園の民営化」

◆「正規保育士の官民(公私)格差と比較」

(※1)
◆2009年9月議会 五十嵐けんの総務委員会所管事項質問 9月18日

◆2009年3月議会 五十嵐けんの総務委員会所管事項質問 3月9日

【追記】
私は、保育の市場主義化には反対ですが、公務員の給与自体は少し高いと考えています。現在、公務員の給与は、法律や条例に規定されているとともに、国の人事院勧告、東京都においては都の人事委員会勧告によって、その上げ下げは決まっています。それは、労働基本権制約の代償措置として市職員などの公務員に対し、適正な給与を確保する機能を有するものですが、国の人事院勧告や東京都の人事委員会の勧告のあり方自体は、民間給与に準拠して定めるというものの、大企業中心の民間給与を調査しており、一般の民間給与実態とはかなりずれているのではないかと思っているところです。 

公務員の給与について、私は、公務員にも労働基本権を認め、「労使交渉」を透明化し、納税者たる市民に見えるように議論し、その公務労働の中身に応じて、市民の理解を得て決めるべきだと考えています。