残念な結果 児童館への指定管理者制度の導入

 今日は、9月市議会の最終日。本会議で追加送付の議案審議、各常任委員会や決算特別員会に付託されていた議案や請願・陳情などの採決などが行われました。

 五十嵐は、2007年度一般会計歳入歳出決算と2007年度特別会計介護保険事業歳入歳出決算の認定に反対。
 議員提出議案『立川市公契約条例』を否決とする総務委員会委員長の報告に反対(=公契約条例に賛成)。
 『児童館条例の一部を改正する条例』に反対。
 『児童館に指定管理者制度を導入する方針に関する陳情』を不採択とする厚生産業員会委員長報告に反対(=陳情には賛成)。
 『議会は使命を果たすことを求める陳情』を不採択とする環境建設員会委員長の報告に反対しました。

 その他は賛成したのですが、非常に残念だったのは、『児童館条例の一部を改正する条例』が、自民党公明党、市民フォーラムの賛成多数で可決してしまったことです。この条例は、児童館に指定管理者制度を導入することができるように児童館条例の一部を改正するものです。指定管理者制度とは端的にいえば今まで市でやってきた事業を民間事業者やNPO法人等に委ねていくことですが、市は現在8館ある児童館すべてに指定管理者制度を導入する方針を持っており、モデル的に、2009年度から幸児童館を指定管理者に委ねていく予定です。この方針もコスト論ありきで、指定管理者制度の導入で児童館のサービスが質的に向上するのかどうかは極めて不明確です。

 今年の5月から6月にかけておこなわれた「児童館見直し方針」に関する意見募集(パブリックコメント)に寄せられた市民の意見は反対や疑問を呈するものがほとんどでした。また児童館に指定管理者制度を導入する方針並びに幸児童館にモデル導入する案件についてスケジュールの見直しを含め、慎重に取り扱うように求める『児童館に指定管理者制度を導入する方針に関する陳情』も出されていました。この陳情も条例と同様に自民党公明党、市民フォーラムの賛成多数で不採択となってしまったのですが、下記の反対討論で示した理由のとおり、現時点での児童館への指定管理者制度の導入は、幸児童館のモデル的導入を含めて時期尚早であり、反対です。

五十嵐の反対討論

 私は、社会民主党・みどり立川・市民の党を代表して、議案第80号 立川市児童館条例の一部を改正する条例に反対ですので、これを可決するという厚生産業委員会委員長の報告に反対の立場で討論します。


 清水市長になられてから、職員削減目標が最優先され、金科玉条のごとく経営改革プランを強引に推し進めようとする姿勢ばかりが目立っています。私たちは、経営改革プランについては抜本的に見直すべきと考えていますが、特に福祉分野の見直しは慎重にすべきと考え、今回の児童館への指定管理者制度の導入についても、コスト論ありきではなく、方針をつくる前やその後に、当事者や現場などに広範に意見をきいて、もっと慎重に時間をかけて調査・研究・分析を重ねるべきと考えます。


 「児童館見直し方針」に関する意見募集(パブリックコメント)には、


児童館運営を単に財政面・人事面を理由に民間委託すべきではない。行政の優先的な課題として自力改善・向上を図るべき。


子どもの安心・安全・すこやかな成長のために専門知識をもった人が関わることが必要。地域力や結びつきが弱くなっている現代、行政が責任を負うべき分野である。


児童館は教育にかかわる問題。3年ごとに管理者交代があると地域から遊離したものになる。児童館管理は専門性と地域のつながりが必要である。


子どもたちが心身共に楽しめる児童館は、利益優先・コスト主義に全くなじまない施設事業である。


という意見が寄せられており、11件27項目の意見は、性急な児童館への指定管理者制度の導入には反対というものや疑問を呈するものがほとんどでした。


 本年5月から6月にパブリックコメントを行い、その意見にきちんと答えるのが不十分なまま、9月議会に児童館条例の一部を改正する条例を拙速に上程するやり方は、清水市長が施政方針でおっしゃっていた「市民との対話に当たって、十分な情報の公開や説明責任を果たし、市民の意見に謙虚に耳を傾ける」という姿勢からあまりにも乖離していると言わざるを得ません。これでは、意見募集(パブリックコメント)が、「一応市民の意見を聞きましたよ」という「ご意見は聞いただけ」の「通過儀礼」になりかねません。少なくとも、図書館の指定管理者制度導入や保育園の民営化問題のように、複数回の市民とのやり取りが必要であると思います。


 厚生産業委員会では、市側は指定管理者導入の理由の一つとして「直営だと柔軟性に欠ける」と言われていましたが、「それはそもそも市当局の責任ではないか」というわが会派の矢島委員の質問に、副市長は、「市の組織の壁があってできない。その責任の一端はあるが、だからこそ改革が必要」と答えていました。この答弁には、そもそも、直営の中でも改革できたことを、市の努力不足で改革をせずに放置し、改革して来なかったことを示しています。そのような市の姿勢で、指定管理者制度を導入すれば、本当にサービスの向上が可能でしょうか。


 児童館への指定管理者制度導入については、

第1に、まだ、児童館に指定管理者制度を導入している自治体が少ないために、そのノウハウが十分に蓄積されているとは言えないことから、子どもの安心・安全・すこやかな成長のために、一定の経験ある専門知識をもった人員配置がされるかどうか不明確であること。
第2に、地方自治体の責任が曖昧になる可能性があること。
第3に、市側は、都内の社会福祉法人並みの給与水準を担保するとのことですが、その額自体がきちんと示されていないこと。
第4に、日曜開館や夜間開館実施以外の質的なサービス向上について不明確であること。
第5に、3年から5年ごとの交代がありうる指定管理者では地域との結びつきや連携が難しいこと。
第6に、子育て、子育ちのネットワークの拠点と位置づけられる児童館の機能が指定管理者では十分に発揮できるかどうか疑問であること。
第7に、社会福祉法人NPO法人だけでなく、営利企業の株式会社にも門戸を開放していること。

など、現時点で多くの問題をはらんでいますので、幸児童館へのモデル的で、試験的な導入ということであっても時期尚早であると考えますので、この児童館条例の一部を改正する条例には反対をいたします。


 もしこのこの児童館条例の一部を改正する条例が成立したとしても、児童館など、施設の性格によっては、公募する団体を、一定の条件にあてはまる団体に限ることは立川市の裁量によって可能です。児童館などの施設の管理運営にあたっては、指定管理者の選定対象は、実績のある社会福祉法人NPO法人に限るなど営利を目的としないものに限定することを求めます。またそのことを今後条例に明記すべきです。


 またモニタリングにおいては、利用者の満足度調査を厳密に行い、現場で働く労働者の賃金が確保され、労働条件が整備されているかなどをきちんと精査されるよう要望します。


 以上です。