沖縄戦「集団自決」への軍関与を否定する教科書検定意見の撤回を求める意見書可決

12日の文教委員会で全会一致で可決・採択されたのに続いて、昨日の立川市議会本会議において、立川市民の皆さんが提出した『沖縄戦「集団自決」への軍関与を否定する教科書検定意見の撤回を求める意見書提出に関する請願』が全会一致(退席者なし)で可決されました。

まず、請願を出された市民の皆さんに敬意を表するとともに、党派を超えて示された立川市議会議員の皆さんの良識に感謝したいと思います。退席者もなく全会一致で、このような請願や意見書が可決されたのは関東圏の地方自治体では非常にめずらしいケースだと思います。それだけに、これから文部科学大臣などに提出される意見書は、11万人の島を挙げての沖縄県民大会で示された教科書検定意見の撤回を求める沖縄県民の怒りの決議の一助となり、重みのあるものとなるでしょう。

しかし、今回の文部科学省の検定はひどいとしか言いようがありません。「教科用図書検定調査審議会」の日本史小委員会の委員には沖縄戦の専門家がいないなか、文科省の原案が実質的・学問的な審議もなく承認されたとのことです。その意図は、「美しい国」を標榜する安倍前内閣が、旧日本軍が自国民である沖縄の住民を守るどころか、銃を向け、犠牲を強いて、死に追いやったという「美しくない歴史」をもみ消して、もしくは薄めてしまおうというところにあったのではないでしょうか。つまり、本質的な狙いは、今後憲法9条を改正し戦争ができる国家にしていくために、都合の悪い沖縄戦の記憶を住民が国に殉じ、自ら選んだ崇高な死であるといことにスリ替えたいという所だったのでしょう。

そもそも日本国内でほぼ唯一の地上戦であった沖縄戦では、約15万人の沖縄県民が凄惨な死を遂げていますが、「集団自決」(強制集団死)が日本軍や戦争体制によって強制された死であることは沖縄県史の2巻にわたる住民の証言の中にも書かれており、その記述は長い年月をかけて当事者たちが重い口を開いて語った事実です。さらに400名余りの「集団自決」(強制集団死)があったとされる渡嘉敷島や135名余りの「集団自決」(強制集団死)があったとされる座間味島でも、最近に至るまで新しい証言が次々に出てきており、旧日本軍の強制と誘導が「集団自決」(強制集団死)を引き起こしたことは、それまでに明らかにされていた証言などからも明白です。逆に、この「集団自決」に軍の関与がなかったという学問的な研究はほとんどないそうです。

沖縄県民大会では「教科書から軍の関与を消さないでください。あの醜い戦争を美化しないでほしい。たとえ醜くても真実をしりたい、学びたい、そして伝えたい」、「このまま検定が通れば、事実でないことを教えなければいけません。分厚い教科書の中のたった一文、たった一言かもしれません。しかし、その中には失われた多くの命があるのです。2度と戦争は繰り返してはいけないという沖縄県民の強い思いがあるのです」と高校生が訴えました。

教科書に事実を記述するために、32年間の「教科書裁判」をたたかい抜いた、歴史学者の故家永三郎先生は、

国定の教科書に
殺されしは幾千万
自国の民衆(たみ)も
アジアの民衆(たみ)も

という朝日歌壇に載せられた女性の歌を引用して、教科書から戦争の惨禍を消そうとすることは許されないと訴えたこともあります。

沖縄県民の怒り、心の痛みを共有し、高校生の言葉を心に刻まなければと思います。なんとしても今回の教科書検定意見を撤回させなければいけません。


以下は可決された請願の全文です。

沖縄戦「集団自決」への軍関与を否定する教科書検定意見の撤回を求める意見書提出に関する請願

請願者 立川の教育を考える市民の会

請願の要旨
沖縄戦についての教科書検定意見の撤回を求める意見書」を関係機関に提出してください。

請願の理由
 文部科学省は、2008年度から使用される高校教科書に、沖縄戦の「集団自決」について「日本軍による強制または命令は断定できない」との検定意見をつけ、5社7冊の日本史教科書で記述の削除・修正が行われました。
 これに対し、沖縄県では検定意見の撤回を求める意見書が2度にわたって全会一致で可決され、全41市町村でも同様の意見書が可決されました。また、沖縄からは、教育長、超党派の議員団、県市町村代表者などがたびたび国への要請に訪れています。
 文科省は検定意見の撤回を拒否していますが、早期に検定意見の撤回を行えば、教科書は再訂正して出版できます。
 そもそも沖縄での「集団自決」は日本軍の関与がなければ起こり得ず、多数の証人証言があるからこそ教科書にも記述され続けてきたのです。
 沖縄からの意見書は「史実を史実として後世に伝えることが責務である」という県民の総意を示したものです。沖縄はアジア太平洋戦争で国内唯一の地上戦の地となり、多くの尊い命を失い、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた県です。敗戦後も米国の支配下に置かれ、今もなお日本にある米軍基地の75パーセントが小さな沖縄の島に集中し、さまざまな危険と不便を強いられています。この沖縄からの訴えを真摯に聞き、自分たちのこととして考えることが大切です。
 平和を希求し悲惨な戦争を再び起こさないようにするためにも、沖縄戦の実相を正しく伝えることは重要です。
 教科書検定問題は沖縄県民だけの問題ではありません。立川市民を初め全国民の問題です。今回の検定意見が速やかに撤回され、教科書記述の回復が行われるよう要請します。

沖縄タイムス沖縄戦「集団自決」の問題の記事一覧
[http://www.okinawatimes.co.jp/spe/syudanjiketsu.html