『東京原発』 (原発にかかわる日本映画 フィクション編 その1)


原発にかかわる日本映画と言えば、なかなかマスコミなどで扱われなかったということもあり、日の目を見ないものが多いのではないかと思います。

もちろん、テレビで放映されることなどほぼないと言っても過言ではありません(いわゆる「放送禁止映像」!?)。

しかも、当時ビデオは発売されても、その後DVD化はされず、廃盤になっていたっていうのがほとんど。

しかし、福島第一原発の大事故・大惨事後に、各地で小規模な上映会がおこなわれたり、DVD化されて脚光をあびている作品もあります。


その筆頭が、山川元監督の『東京原発』。2002年にクランクアップしていたのに、上映してくれる映画館がなく、2004年、東京の2館でやっと公開。でも当時はぜんぜんヒットしなかった作品(東京で開かれた2005年度地球環境映像祭で最優秀賞でDVD化)。


役所広司が演じるカリスマ東京都知事が、都庁の局長クラスの幹部職員を特別会議室に招集し、いきなり東京に原発を誘致すると宣言。この会議室で、段田安則が演じる副知事らの慎重派と知事に迎合する推進派との喧々諤々の議論が繰り広げられる内容。

アドバイザーの大学教授なども呼んで、原子力発電所のメリット・デメリット、代替エネルギーについて徹底的に議論を闘わす中で、如何に原発が危険であるのか、トイレのないマンションと言われるような放射性廃棄物の処理問題など、観る者に真面目にわかりやすく、しかもユーモラスにあふれて、面白おかしく伝える内容になっています。そこが秀逸。

この会議室で「熱い!?」議論が交わされている一方で、フランスから極秘裏に運ばれてきたプルトニウム燃料を載せたトレーラーが、アル中の運転手の運転する中で…。


あなたも、“チェレンコフの青い光”を見るかもしれません…。


この作品で、脇を固めている局長クラスの幹部職員役の吉田日出子岸部一徳、菅原大吉、田山涼成平田満の演技もキラリと光っています。

私の職業柄かもしれませんが、「ホントにこういう部長や課長いるわ!? 」と思わせる配役と演技になっています。


ゴールデンウィークにおすすめのDVDです。


ちなみに、私は、だいぶ前ですが、横浜の菊名駅に中古ビデオの露店が出ていた時に、300円で買いました。

山川元(げん)監督は、降旗康男、雀洋一、伊丹十三周防正行などの監督たちの助監督を務めてきた人で、この『東京原発』は、広瀬隆著の『東京に原発を!』を読んでヒントを得て脚本を書き、周防正行監督で役所広司主演の『Shall we ダンス?』(1996年作品)の助監督だった縁で役所に出演を依頼して、快諾を得たそう。


撮った後は仕事がなかったそうです。

(現在の俳優山本太郎さんと同じ状況!?)